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Africa

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季節と人と社会と速度をこえた大陸で                

 「生きる」。この一言がどれだけ深く、厳しく、そしてどれだけ温かいかを教えてくれたのがアフリカでした。野生動物の中に見られる生と死だけではない。この大地に住む、すべての者たちが持つ生命の営み。永遠ともいえるその繰り返しの中で私たちは存在している。22歳だった私は、アフリカという巨大なエネルギーのもと、打ちひしがれても進まねばならないという「おきて」のようなものを感じ、学んでいました。

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 「野生のライオンが見たい」。たったこの一言で私はアフリカへ行く決心をしました。当時(1990年)は携帯電話もインターネットもなく、「現地の情報は現地で得る」という時代。大学卒業を目前とした時期でもあったため、周囲の反対を押し切っての渡航でした。 半年間ケニアの首都ナイロビでスワヒリ語を習いながらの学校生活を経て、バックバック一つで5か国を一人旅。見るもの、聞くもの、触るもの、食べるもの。そして、におい。全てが新しく、全てが驚きに満ちていました。電気の来ている地域も限られていたため、これほど時間と言うものを肌で感じたことはありませんでした。道行く中で目にする民芸品や外壁に書かれた模様や形、生活の中にあふれる強烈な色使いは人々の心さながらに表現され、愛しさも憎しみも、楽しさも悲しささえも包み込んでいるようでした。

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 3度目の旅の途中、私は衝撃的な体験をします。「凄い雨。いつ止むのかな。」突然のスコールに雨宿りしていた時の事。同じ軒下で雨の止むのを待っていた老人が微笑みながら言いました。「なぁに、あと10分もすれば止むよ。」目を丸くする私に老人はこう続けたのです。「見てごらん。もうあの当たりが明るいだろ。そこから向こうに黒い雲がある。あの黒い雲がここに来るまで2時間くらいある。2時間もあれば家に帰れる。」ほどなくして雨はやみ、呆けている私をしり目に老人は意気揚々と家路へと歩き出しました。「あの爺さん、空と雲の色で時間を読んだよ…。」

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私はハッとしました。「今、見ている色。今、そこにある色が大切なのだ。日々繰り返される日常という中で見る色が生活の中で生きているのだ。私が初めて訪れた時に学んだ“生きる”ということに色が密着しているのだ。」。この発見は、なぜ私が色紙という素材を使うのかを意味づけ、決定づける出来事になりました。と同時にアフリカという大陸に来たことの意味、アフリカを描くという意味をも決定づけたのです。そう、それは「アフリカで生きた」という確固たる事実が私の心に芽生えたからなのです。

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「アフリカの水を飲んだ者は、またアフリカに帰る。」

そんな言い伝えがあります。私が次にアフリカに帰るのはいつなのか。私自身が楽しみな事です。